技術ブログ
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渡部です。 db tech showcase Tokyo 2019で、「経験ゼロの新卒採用者をORACLE MASTER Platinumまで導いたエンジニア育成活動のご紹介 ~初採用から13年間の失敗と改善~」というタイトルで、 エンジニア育成についてお話させていただきました。
テクニカルな内容ではないため、どれだけの方にご出席いただけるか不安もあったのですが、 多くの方に聴講いただけました。 会場に足を運んでいただいた皆様、ありがとうございました。
とはいえ、遠隔地にお住まいの方など、現地での参加が難しい方もいらっしゃると思いますので、 セッションで使用したスライドから、いくつかを抜粋しながら簡単に内容をご紹介させていただきます。
ITの現場で日々頑張っている方は痛感されているとは思いますが、現在ITエンジニアがとても不足しています。 事実、弊社コーソルは、非常に多くの「Oracle Databaseのプロフェッショナルサービスを提供して欲しい」という引き合いをいただいています。
以下のスライドの通り、 情報サービス業は、2012年以降 人材不足傾向であり、その傾向は年々強まっています。 そして、全産業よりもIT業界は人材不足傾向が強いです。 (出典 IPA IT人材白書 https://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/about.html)
そして、将来的な人口動態(少子化・高齢化)を踏まえると、人材不足が今後解消される可能性は極めて低いと考えられます。
このようなIT業界における人材不足を受けて、経済産業省は今後のIT人材の活用・確保に向けた提言を行っています。 (出典 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/27FY_report.html)
提言にはいくつかの施策がふくまれますが、施策の1つに「個人のスキルアップ支援の強化」が挙げられています。 私の解釈を交えつつ端的に言うと、これは「優秀なエンジニアは簡単に採用できないのだから、自社エンジニアをスキルアップさせなさい」ということでしょう。
そして、本セッションでは、この、個人のスキルアップ支援の強化にフォーカスしてお話しました。
コーソルでは、会社設立3年目から毎年新卒を採用しています。また、近年はおおむね4半期ごとに第二新卒を採用しています。 当然のことながら、新卒および第二新卒はOracle経験はゼロ、たいていの場合IT経験もゼロですから、 新卒採用を開始した2007年4月から、13年にわたってOracle経験ゼロの新卒社員および第二新卒社員をOracleエンジニアとして育成してきたことになります。
「日々苦労の連続」というのが正直なところですが、この13年間の経験からいくつかの学びも得ましたので、 それを共有したい想いで今回の発表に至りました。
コーソルにおけるエンジニア教育の流れの大枠は以下の通りです。
入社してから部署配属までの間、4か月間の配属前教育(技術+非技術)を行います。 Oracle Databaseの技術習得という観点では、この期間内にORACLE MASTER Bronzeを取得するのが目標となります。 ORACLE MASTER Bronzeは、初級レベルのOracle Databaseの資格です。
配属前教育が終了すると、実業務を担当する部署に配属され、OJTを行います。 新人エンジニアが配属される部署は、製品サポートを担当する部署であることが多いですが、一部例外もあります。
弊社の場合、製品サポート部署では、Oracle Databaseに関する問合せを主に担当することことになります。 新人エンジニアに対しては、比較的簡単なレベルの問合せを割り当て、さらに上司の指導やフォローをして業務をこなす形になります。
私自身は、製品サポート業務はOracle Databaseのスキルを高める最短の方法であると考えています。 弊社としても同様の考えです(もちろん新人エンジニア個人個人の向き不向きはありますが)。
エンジニアのスキルを高めるために有効な要素はいくつかあげられますが、私は、「業務の量」、「業務の質」、「職場環境」が最も重要な3要素であると考えます。
新人エンジニアは、OJTでスキルアップしながら、ORACLE MASTER SilverとGoldの取得にチャレンジします。
初級レベルを卒業した後の学習プロセスは様々です。 製品サポート業務を通じてスキルをさらに高めるのはもちろんですが、 社内セミナーなどを通じてスキルアップしたり、 ORACLE MASTER Platinumにチャレンジするなどがあります。 製品サポート業務でスキルを十分に身に付けたあとは、適性や希望を踏まえてDBA部門などにジョブチェンジする場合もあります。
実際にエンジニア教育に取組まれた方であれば、お分かりいただけると思うのですが、 教育はとても手間のかかる作業です。 教育/育成である程度の明確な成果を出すためには、専任の教育担当者を置く体制が必要です。
コーソルでは、以下の体制で教育/育成に取り組んでいます。なお、私は技術統括というポジションで、 主に中堅エンジニア向けの技術力UPに取り組んできました。
その結果、以下の様な実績を得ています。
ここ数年の誇れる育成成果として、ORACLE MASTER Platinum単年取得者数 6年連続No.1と、累計取得者数 4年連続No.1 があるのですが、この成果は新卒/二卒入社者のORACLE MASTER Platinum取得がなければ決して達成できないものでした。
関連記事:ORACLE MASTER新体系向け試験対策書籍まとめ+お勧め参考書
今回の発表でご紹介したコーソルのエンジニア育成の枠組みや多くの施策は、 13年にわたって、日々問題の解決/改善に取り組むなかで作り上げられたものです。
今回の発表準備の中で得た気付きでもあるのですが、 会社の成長フェーズや外的な環境に変化に応じて、解決/改善を重点的に取り組んだフェーズは異なっていました。 振り返ると、中堅エンジニアのスキルアップ → OJTの改善 → 配属前教育 というように、 時代によって重点領域が移り変わっていました。
最初に取り組んだのは、中堅エンジニアのスキルアップです。
もともとコーソルは、経験あるOracle Databaseサポートエンジニアが集まって設立された会社です。 彼らの実力は確かなものですが、会社が成長するためには、彼らに頼りきりではなく、 新たに入社してくれたエンジニアにも成長してもらう必要があります。
会社としては単に「彼らが成長してくれる」のを待つのではなく、彼らに積極的に働きかけ「育成」することが必要です。 しかし、一口に「育成」といっても、何をすればよいかは明確ではありません。いわば「終わりがない」「きりがない」「すべてやり切ったがない」世界ですので、何をターゲットにするかが悩ましいところでした。
そこで、育成については、「二面戦略」で臨むことにしました。 「ORACLE MASTER Platinum取得」というわかりやすいターゲットと、 社内セミナー、検証環境、情報共有などの地道な活動の両面で進めました。
「教育」「育成」は、やるべきことが山ほどある割に、成果が見えにくいです。 いわば「砂漠に水を撒いている」ような取り組みであり、担当者が疲弊して先細りになりがちです。
このため、「合格 or 不合格」など結果がわかりやすい「ORACLE MASTER Platinum取得」をターゲットに含めることにしました。 加えて、若干イキオイでORACLE MASTER Platinum取得者数の国内No.1を目指しました。 当時としてはかなり挑戦的な目標でしたが、全社的な目標を掲げ、それに取り組むことへの価値を重視しました(達成できて本当によかった!)。
また、ORACLE MASTER Platinumが単なるペーパーテストではなく、実技試験であるということも、弊社にとっては重要でした。 実技試験であるため、試験学習が実際のスキルアップに直結します。
正直言って、推進する側としても、「試験だけのための学習」を現場に強いるのは気が引けるものです。 ORACLE MASTER Platinumのような実技試験であれば「現場での実務に役立つ学習」となるため、胸を張って受験を薦められます。
推進することに決めたORACLE MASTER Platinumですが、経費や学習環境などの障害もあったため、都度課題をクリアしてきました。 特に必要経費については、みなで知恵を絞って、会社と受験者の双方がフェアに負担しあいつつ、合格すれば受験者にご褒美を出せる仕組みを作りあげました(「フェア」というのは私の私見/見解ですが)。
次に取り組んだのは、OJTにおけるテクニカルスキル習得の効率向上です。
Oracle Databaseの肥大化や、人によっては自ら知識を獲得する姿勢が欠ける兆しが見られたため、これらの課題についても都度対応しました。
ほぼ毎月実施している社内セミナーや、膨大な時間を費やして作り上げた検証環境は、(会社の規模を勘案すると)胸を張れる取り組みだと考えています。
また、「エンジニアとしてキャリアを作るためには、自ら知識を習得し、問題を解決する姿勢が不可欠」であるという点については、 今後も継続して訴えていかない部分かなと感じています。
数年前から現在に至るまで取組んでいるのが、新人の育成の改善です。
セッションでは、論点やストーリーをわかりやすくするため、「ゆとり世代」という言葉/概念を軸に話を進めましたが、 私個人としては「社会人経験がない学生/少ない若者と会社が遭遇したときの普遍的な問題」として、この問題を捉えています。
程度の違いこそあれ、これは昔から存在していた普遍的な問題であって、 社会環境などのさまざまな変化に伴って問題が大きくとらえられるようになってきたのだという考えです。
以下のスライドに一般的に言われる「ゆとり世代」の特徴をまとめていますが、 自分の若いころを振り返ってみれば、似たような点はかなり自分にもあった気がします 😛
いろいろと試行錯誤はありましたが、コーソルにおける最終的な結論も、 「(ゆとり世代を意識しない)新人/成人教育の基本を重視したアプローチ」が大事だよね。というものでした。
最終的な結論が「基本重視」ということなので、 どうしても腰を据えた方向でのアプローチを中心に紹介する形になっていますが、 実践しやすいアプローチもご紹介しています。
「同じことを繰り返し実習させること」と「褒めること」です。
教えるべきことはたくさんありますし、最近の若者は優秀なので、 どんどん新しいことをやらせたくなりますが、焦っては消化不良を起こしてしまいます。 一旦立ち止まって、同じことをやらせることも重要です。 自己成長を実感できるため、自己肯定感を高めることにもつながります。
また、言われてみれば当たり前なのですが忘れがちな点として、成長モデルを正しく捉えることがあります。
ちゃんと教育を学んだ人であれば大丈夫だとは思うのですが、 成長モデルを「誤った考え」で捉えているいる人が結構多い気がします。
関連記事:環境構築が不要なORACLE MASTERのSQL学習方法(Oracle Live SQL)
発表資料は以下のURLからダウンロードできます。実際の発表時とほとんど同じですが、若干修正を加えています。
お役にたてるところが1つでもあればとても嬉しいです!
[補足] コーソルのエンジニア教育・育成について