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Oracle ACEの渡部です。以下の理由から、あらためてOracle 21c サポート終了/非推奨機能/動作変更について整理しておこうと思い、記事にしました。
以下を参考に記載しています。
Oracle Database 21cサポート対象外機能のうち、目についたものです。
以前からアナウンスされていましたが、非CDB構成(非マルチテナント構成 / 従来のシングル構成)がサポート対象外になりました。 21c以降では、CDB構成(マルチテナント構成)のみがサポート対象となります。
よって、1つのデータベースしか使用しない場合でも、1つのPDBのみを含むマルチテナント構成(いわゆる「シングルテナント」)として、データベースを作成する必要があります。
WindowsプラットフォームでACFSがサポート対象外となります。Windows以外のLinux/UNIXプラットフォームではACFSのサポートが継続されるようです。
ACFSは、ASM上に構成されるPOSIX互換のクラスタファイルシステムです。基本機能であれば、無償で使用できるため、クラスタ内で共有したいファイルの配置に便利でした。
HP ServiceGuardなどのいわゆる3rd-Partyクラスタウェア製品とOracle Clusterwareを共存させる構成がサポート対象外となります。
Oracle Database 9iのころは、Oracle Clusterwareが提供されていなかったため、3rd-Partyクラスタウェア製品を用いてRACを構成する必要がありました。この流れを踏まえて、HP-UXやIBM AIXなどのプラットフォームでは、Oracle Database 10gでOracle Clusterwareが提供された後も、3rd-Partyクラスタウェア製品とOracle Clusterwareを共存させる構成が使われていました。
Oracle Clusterware(Oracle Grid Infrastructure)の登場から時間が経過したこと、HP-UXやIBM AIXなどのUNIXプラットフォームの位置づけが小さくなったことなどから、3rd-Partyクラスタウェア製品とOracle Clusterwareを共存させる構成をサポート対象外としたと理解しています。
クラスタドメインメンバークラスタ(メンバークラスタ)は、Oracle Database 12c R2で導入されたドメインサービスクラスタの枠組みにおいて、ドメインサービスクラスタからサービスを受ける側のクラスタです。 メンバークラスタの前提となるドメインサービスクラスタの枠組みは非推奨扱いとなっています。
ドメインサービスクラスタの枠組みは、複数のノードから構成されるクラスタをさらに統合して、複数のクラスタを統合しつつ、ドメインサービスクラスタがその配下のメンバークラスタに記憶域サービスや管理機能を提供するかなり「野心的」な枠組みでしたが、どうやら方向性の修正が行われるようです。というのも、Remote GIMR Support for Oracle Standalone Clustersなど、ドメインサービスクラスタが目指したほう構成に類似した機能は追加されているためです。 とはいえ、データベースの統合すらなかなか難しい日本では、クラスタの統合はとても難しいだろうなぁとは思います。
Oracle Enterprise Manager Expressは、Oracle Databaseに内包されたWeb管理コンソール機能です。 Oracle Enterprise Manager Expressの一部の機能では、Adobe Flash技術を使用していましたが、 Flash Playerのサポートが2020年12月31日で終了した関係で、Adobe Flash技術を使用するOracle Enterprise Manager Expressは使用できません。
Flashサポート終了/廃止にともなうOracle Enterprise ManagerのJET化状況まとめ《随時更新, 2020年12月時点》
当初代替とされたのは、Oracle JET版のOracle Enterprise Manager Expressなのですが、後述する通り、Oracle Enterprise Manager Express自体が21cで非推奨となっている点に注意してください。
Oracle Fail Safe(OFS)はWindowsプラットフォーム上で共有ディスクを用いたActive-Standby型のHA構成を実現する機能です。 無償で使用できるため、Windowsプラットフォーム上で重要なOracleデータベースを構築する場合に比較的よく採用されました。
Oracle 21cではOFSがサポート対象外となるため、21c以降でWindowsプラットフォーム上で共有ディスクを用いたActive-Standby型のHA構成を実現する場合、Oracle SEHAなどを使用する必要があります。
19c新機能 SEHA / GIベース シングルHA構成 – SE2-RAC廃止対応
なお、私の記憶では、Oracle 21cの提供開始時点では、OFSはサポート対象外にはなっていませんでした。おそらく、2022年4月あたりでサポート対象外に追加されたものと思われます。
Oracle Database 21cで非推奨となる機能のうち、目についたものです。
ノード追加・削減にともなうRACデータベースのメンテナンス作業をほぼ自動化する、ポリシー管理データベースが非推奨扱いになりました。ポリシー管理データベースは、Oracle Database 11g R2で導入されました。
日本でポリシー管理データベースはあまり使用されていない印象を個人的に持っていますので、実務的な影響はさほど無いはずです。 しかし、データベースインフラ統合のために導入された技術であるため、今後オラクル社はどの様な機能を活用してデータベースインフラ統合を進めていくかが気になります。
統合監査以外の監査機能が非推奨扱いとなります。 Oracle Databaseには機能が異なるいくつかの監査機能がありました。これらを統合するものとして、Oracle Database 12cから統合監査が導入されました。
統合監査の導入から十分に経過したことから、従来型の監査機能から統合監査への移行を促すために、統合監査以外の監査機能が非推奨扱いとなったと理解しています。
Oracle Enterprise Manager Database Expressが非推奨扱いになりました。Flash廃止が影響している気がします。
後継はOracle SQL Developerです。Oracle SQL DeveloperのDB管理機能が強化されてきていることも非推奨扱いの背景にある気がします。
Oracle Databaseに同梱されたWebベースの管理ツールについては、Oracle 10gのOracle Enterprise Manager Database Control -> Oracle 12cのOracle Enterprise Manager Database Expressという系譜がありましたが、今後はサポート対象外となるかたちですね。
後継は、 Oracle analytic viewsまたはOracle Essbaseです。
Oracle Database 21cで動作が変更される機能のうち、目についたものです。
Read-Only Oracle Home(読取り専用ORACLE-HOME)は、Oracle Database 18cで導入された機能で、ORACLE-HOMEから更新されるファイル、新規追加されるファイルを排除することで、ORACLE-HOMEを含むディスクイメージを仮想環境で取扱い易くするための機能です。
Oracle Database 21cからは、Read-Only Oracle Homeがデフォルトになります。 これにより、従来ORACLE-HOME以下の配置されていた初期化パラメータファイル(spfile)、パスワードファイルの配置場所が変わります。単純な変更ではありますが、運用に影響する部分であるため、注意が必要です。
サポート対象外と非推奨は意味が異なります。具体的には、
すなわち、Oracle Database 21cでは、
となります。