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Oracle DatabaseのOracle ACE Proが選んだ2024年オラクル10大NEWS

Oracle ACE Proの渡部です。 この記事は、 JPOUG Advent Calendar 2024 1日目の記事です。

2024年の振り返りとして、Oracle Database分野のOracle ACE Proから見たオラクル10大NEWSをまとめてみました。

色々あった(なかった)2024年に想いを馳せていただければ幸いです!

なお、順番に特に意味はありません!

1. AWSでOracle RAC/Exadata/Autonomous Databaseを使用可能に

今年のOracle CloudWorldの目玉となる発表は、AWSとの戦略的パートナーシップ締結でした。

米国太平洋夏時間9月10日(火)午後1時から開催される「 Oracle CloudWorld 」のステージで、オラクルの会長兼CTOのラリー・エリソン(Larry Ellison)とAWS CEOのマット・ガーマン(Matt Garman)がこのパートナーシップについてお話する予定です。

AWSとの戦略的パートナーシップ締結に基づき、「Oracle Database@AWS」が提供されることが発表されました。「Oracle Database@AWS」により、AWS環境で以下が使用可能になる予定です。

  • Oracle Autonomous Database
  • Oracle Exadata Database Service
  • (Oracle RAC : 上記に内包されるかたちで)

オラクルとAmazon Web Services、戦略的パートナーシップを発表 より

「Oracle Database@AWS」は、お客様がAWS内から専有インフラストラクチャ上の「Oracle Autonomous Database」と「Oracle Exadata Database Service」にアクセスできるようにする新しいサービスです。

これまでAWS環境で使用可能だったOracle Databaseの使用形態は以下の2つです。

  • Amazon Web Services Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)
  • Amazon Relational Database Service(RDS)

上記の使用形態では、Oracle RAC を含めたいくつかの重要なOracle Databaseの機能を使用できませんでした。

もちろん、OCI環境ではこのような制限はなく、すべてのOracle Databaseの機能を使用できたわけですが、 今回提供が発表されたOracle Database@AWSにより、AWS環境においてもOCI環境同等のOracle Databaseの機能を使用できるようになるようです。

今回のパートナーシップは、以前からOracle Databaseに関わってきたエンジニアにとっては"非常に感慨深い"ものです。というのも、Oracle ACE 朝日さんの以下のスライドにあるように、 パブリッククラウドにおいてAWSとOracleは長年対立関係にあったためです。

https://speakerdeck.com/asahihidehiko/jpoug-10-20241018-oracledb-aws-v1-dot-3?slide=16

ただ、その一方で、パブリッククラウドにおいてAWSが圧倒的な存在感を持っていることは疑いないことで、顧客から「AWS環境でフル機能のOracle Databaseを使いたい!」という強いリクエストがあったであろうことは容易に予想できます。

「AWSとオラクルには共通の顧客(両社のサービスを利用する顧客)が数多くいる。そうした顧客から、これまで何度も『いつになったらAWSクラウド内でOracleのデータベース(Exadata)が使えるようになるのか』と尋ねられていた。それが今年の12月に実現する。とても楽しみだ」(エリソン氏)

 ステージに招き入れられたAWSのガーマン氏も、AWSとオラクルの共通顧客は「『AWSかオラクルか』ではなく『AWSもオラクルも』選びたいと考えていた。それが実現できることになってとても興奮している」と語る。

Oracle Database@AWSは、このような顧客に対してとても嬉しいサービスであることは間違いありません。

2. Google CloudでのOracle Databaseの使用形態が"大幅に"拡大

オラクルとGoogle Cloudは、2024年6月に、OCIとGoogle Cloudを組み合わせたマルチクラウドにおけるパートナーシップを締結しました。

私の知る限り、オラクルとGoogleがOCIに関わるパートナーシップを締結するのはこれが初めてだと思います。その意味で、このパートナーシップは非常に画期的なものです。

この点について、ミックさんのnoteから引用させていただきます。

て、それではOracleとGoogleの関係はどうだろうか。実は、従来この両社の関係は、険悪とまではいかないまでもかなり冷え込んでいた。(略) しかし2024年6月に大きな発表があった。(略) これは歴史的なデタント(雪解け)である。

このパートナーシップの影響を示す一つの側面として、Google Cloudで許されるOracle Databaseの使用形態の変化について説明します。

このパートナーシップが締結されるまで、Google CloudでOracle Databaseを使用できる形態はベアメタルに限られていました。すなわち、ベアメタルにOracle Databaseをインストールする必要がありました。

このパートナーシップの締結により、以下の形態でOracle Databaseを使用できるようになります。

  • Oracle Database@Google Cloud : Google Cloud環境でOracle Autonomous DatabaseおよびOracle Exadata Database Serviceを使用
  • Oracle Interconnect for Google Cloud: 専用NW経路を通じて、OCI環境のOracle Autonomous DatabaseおよびOracle Exadata Database Service、Oracle Base Database Serviceを使用
  • Google Cloudの仮想マシン上でOracle Databaseを使用

なお、これまで、Google Cloudの仮想マシン上でOracle Databaseを使用できなかった点に驚く方も多いのではないでしょうか。AWSやAzureでは仮想マシン上でOracle Databaseを使用できていましたからね。

この理由は、「承認されたクラウド環境」にGoogle Cloudが含まれていなかったからです。

今回のパートナーシップにより「承認されたクラウド環境」にGoogle Cloudが含まれるようになったため、今後はGoogle Cloudの仮想マシン上でOracle Databaseを使用できます。

3. OCI/Oracle Databaseのマルチクラウド対応

オラクルは、2022年頃から「マルチクラウド戦略」を打ち出していましたが、その進展状況にはパブリッククラウドベンダ毎に差があり、Microsoft Azureのみが先行していました。

しかし2024年は、上記のとおり、AWSおよびGoogle Cloud向けのマルチクラウドサービスの提供が開始ないし発表され、マルチクラウド対応が一層進む形になりました。

パブリッククラウドベンダ毎のサービス提供状況については、Oracle ACE 朝日さんがJPOUGで発表いただいた際のスライドが参考になります!

なお、Microsoft Azure向けのマルチクラウドサービスも強化されています。

「Oracle Database@Azure」は現在、Microsoft Azureの6リージョン(オーストラリア東部、カナダ中部、米国東部、フランス中部、ドイツ中西部、英国南部)で提供されています。さらに15リージョン(ブラジル南部、インド中部、米国中部、米国東部2、イタリア北部、日本(東日本)、ヨーロッパ北部、米国中南部、アジア東南部、スペイン中部、スウェーデン中部、アラブ首長国連邦北部、ヨーロッパ西部、米国西部2、米国西部3)でも間もなく提供開始となります。

新サービスを「Oracle Database@Azure」に追加しています。現在、「Oracle Database Zero Data Loss Autonomous Recovery Service」が「Oracle Database@Azure」で提供されており、「OCI GoldenGate」も間もなく提供開始予定です。

オラクル社が、自社製品/サービスを複数ベンダ/プラットフォームに対応させることでシェア拡大を図る様子は、1970年代~80年代のOracle Databaseを想起させます。当時のエンタープライズIT業界では、各社が自社独自のUNIXを提供していましたが、Oracle Databaseはそれら複数のUNIXに幅広く対応することで、シェアを拡大しました。

キャッツCEOは講演の冒頭、新型コロナ禍以前の同社のカンファレンス名が「OpenWorld」だったことを引き合いに出し「私たちのルーツに戻る」と述べた。10日の別の基調講演に登壇したラリー・エリソン会長兼CTOも同じ趣旨の発言をしたように、オラクルのデータベース製品はメインフレームやPCでOSを問わず動作するオープン性に特徴があった。オラクルが推進するマルチクラウド、顧客やパートナーによる専用リージョンの設置を含め、パブリック、プライベートといった形態を問わずクラウドを活用できる分散クラウドの戦略は、このオープン性に回帰する動きと言える。

"OpenWorld"からリネームされた "CloudWorld"が、"OpenCloudWorld"にリネームされる日も近いかも?

4. Oracle DatabaseのExadata化を促進する?Exadata Exascale

2024年7月にExadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS) の提供が発表されました。

Exascaleの技術的詳細については以下の資料をご覧いただきたいのですが、

個人的には以下の側面に注目しています。

  • 全Oracleデータベースの総Exadata化を促進するキーテクノロジとしてのExascale
    • Exascaleの最小構成が比較的小規模(ECPU 8のVM2つ+DBストレージ 300GB)ですので、多くのシステムOracleデータベースが対象スコープになります。
    • Oracle Databaseのマルチクラウド対応のキーテクノロジがExadataである。という方向性にも沿うものです。
  • Autonoumous Databaseとの抽象化単位の違い
    • "抽象化単位"は非常に乱暴に単純化すると「切り出しの単位」であり、この観点に従うと、Autonoumous Databaseは「PDB単位でのExadata切り出し」、Exascaleは「VM単位でのExadata切り出し」と言えます。
    • オンプレミスからの移行を考えると、VMの管理権限が解放される点は重要です。Oracle Base Database Serviceと同様の考え方です。
    • 考え方が若干先進的(すぎる)「Autonoumous Databaseからの揺り戻し」として、Exascaleを捉えることもできるかもしれません。

Exadata Database Service on Exascale Infrastructure(ExaDB-XS) サービス技術詳細より

5. VMware販売方針変更により Oracle Cloud VMware Solution(OCVS) に注目が集まる

2023年11月にVMware社がBroadcom社に買収されたあと、製品ラインナップやライセンス体系が大幅に変更されました。

変更内容の概要は以下の通りです。

  • 永久ライセンスが廃止され、コア単位のサブスクリプションライセンスへ変更された
  • 製品が4つのエディションに集約され、機能単位の購入ができなくなった。
  • 企業が購入できるエディションの制限

これらの変更は、総じてライセンスコスト増をもたらすものです。

この事態を受けて、各社が「脱VMware」施策を提供していますが、Oracleのアプローチは「続VMware」です。

「続VMware」を実現する具体的なサービスはOracle Cloud VMware Solution(OCVS) です。

OCVSは、2020年から提供されているサービスです。 提供開始当初の私の印象としては、「単にオンプレミスVMwareをクラウドインフラに移動させるだけで革新性に欠けている」というものだったのですが、これが「続VMware」するには逆に"プラス"に働いている格好です。

https://speakerdeck.com/oracle4engineer/oci_technical_deep_dive_20241029_ocvs?slide=8

また、「契約中はVMwareライセンス費用を含めた価格を固定できる」という「隠し玉的な利点」 (サービス企画時のOracle vs VMwareの交渉で、VMware社からこれを勝ち取っていた?)があり、 この点も、ライセンスコスト増に嫌気を感じているユーザーに魅力的に感じられているようです。

https://speakerdeck.com/oracle4engineer/oci_technical_deep_dive_20241029_ocvs?slide=6

なお、弊社には多数のVMwareエンジニアが在籍していますが、一部のエンジニアはOCVSのプロジェクトに参画し大活躍しております!! わっしょい!

6. OCIガバメントクラウド事例が続々発表

行政に関わる業務システムのガバメントクラウドへの移行が進んでいます。

このガバメントクラウドにおいて、大きなシェアを占めるクラウドベンダはAWSです。 AWSはガバメントクラウドの先行事業の事業者に選ばれているなど、ガバメントクラウドにおいて非常に重要な位置づけにあります。

検証事業で採択されている早期移行団体463団体のうち、300を超える自治体がAWSを採択しているという。これはもはや「一人勝ち」とも言ってよい状況だ。

一方、OCIは2022年10月にガバメントクラウド向けクラウドサービスに選定されました。

  • デジタル庁、日本オラクルを「ガバメントクラウド」のサービス提供事業者に選定 - ZDNET Japan (2022年10月)
    https://japan.zdnet.com/article/35194251/

    デジタル庁は、日本政府が利用する共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」の整備に向けて、パブリッククラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)を選定した。日本オラクルが10月6日に発表した。

  • ガバメントクラウド OCI 利用ガイド - デジタル庁
    https://guide.gcas.cloud.go.jp/oci/

AWSに遅れてガバメントクラウドに選定されたかたちになりましたが、その後、着実に採用が進み、2024年ごろから事例や計画が続々と発表されてきています。

7. OCIのシェアが着実にUPし"IBM越え"達成

ガバメントクラウドのところでも間接的に触れましたが、パブリッククラウド分野のシェアNo.1ベンダはAWSであり、オラクル(OCI)は後発です。

皆さんはご存じかと思いますが、パブリッククラウド分野では"Big 3" (AWS, Microsoft Azure, Google Cloud)のシェアが圧倒的で、これら3社で60%以上を占めています。

正直、オラクル(OCI)のシェアは依然として小さいのですが、徐々にシェアを拡大しており、Synergy Research Group社による2024年第2四半期の調査で、IBMを抜いたことが発表されました。

4位以下のベンダ別のシェアでは、ついにオラクルがIBMを抜いたことが示されました。

これにより4位がアリババ、Salesforceとオラクルが同率6位、そしてIBMが7位になるという順位の変動がありました。

上記の記事にもありますが、近い将来、オラクル(OCI)はSalesforceを抜くと思われます。また、アリババの成長性についてあまり良いニュースを聞かないので、遅くとも数年以内にはオラクル(OCI)はアリババを抜き、4位になると思います。

一度やると決めてシェアを取りに行くときの同社のなりふり構わなさは見ていて惚れ惚れする。

いやあ、オラクルさんの"根性"は凄いです。

8. MySQL 8.4 LTS と9.0がリリース

MySQLでは、2023年7月リリースのMySQL 8.1から、Innovation Release と Long-Term Supported Release(LTS Release)の2種類で構成される新しいリリースモデルが導入されています。

2024年は、このリリースモデルに従い、2024年4月にLTS ReleaseとしてMySQL 8.4が、2024年7月にInnovation ReleaseとしてMySQL 9.0 と MySQL 9.1 がリリースされています。素晴らしいですね!

MySQL 8.0の延長線上にMySQL 8.4が位置づけられている関係上、MySQL 8.4の新機能にさほど目新しいものはありませんが、

このように、MySQL 8.0シリーズ自体があたかもInnovation Releaseのように進化し続けるスタイルだったこともあり、実はMySQL 8.0の最新バージョンとMySQL 8.4とは、それほど大きな違いはありません。個別の違いについては公式マニュアル「What is new in MySQL 8.4 since MySQL 8.0」を参照していただくとして、

MySQL 9.0 および 9.1 は、そもそもが "Innovation Release"という位置づけですので、いくつか大きな新機能が導入されています。

9. Oracle Database 23cが23aiにリネームされてリリース

2023年9月にOCI Base Database Service限定でリリースされていたOracle Database 23cが、 23aiにリネームされ、2024年5月にリリースされました。

Oracle Database 23aiがクラウド限定でリリース。Free版も

Oracle Database 23aiのリリース対象は順次拡大されました。 ( Doc:742060.1 Release Schedule of Current Database Releases をもとに作成)

  • 2024年5月
    • Base Database Service (旧 Database Cloud Service)
    • Exadata Database Service on Dedicated Infrastructure (旧 Exadata Cloud Service)
    • Exadata Database Service on Cloud at Customer
    • Autonomous Database(除く Autonomous Database on Shared Exadata Infrastructure)
  • 2024年6月
    • Autonomous Database on Shared Exadata Infrastructure
  • 2024年7月
    • Oracle Database Appliance - On-Premises Engineered Systems
    • Exadata - On-Premises Engineered Systems

注意いただきたいのは、「(エンジニアドシステムではない)通常のオンプレミス向けOracle Database 23aiがいまだにリリースされていない」という点です。 当初は"1H CY2024(カレンダー上の2024年上半期、すなわち2024年1月~6月)"に予定されていたのですが…

10. オンプレ版Oracle 23ai 結局2024年にすらリリースされず…

残念、オンプレミス版Oracle Database 23aiは、2024年にすらリリースされませんでした…

オンプレミス版Oracle Database 23aiのリリース予定日が後ろ倒しに

オンプレミス版Oracle Database 23aiのリリース予定日が2025年に + 19cのPremier Supportが大幅延長

こうなると「"23ai"の"23"ってどういう意味だっけ?」と悪態をつきたくなりますが、マジメな話、「Oracle 23aiがいつ提供されるのか?」は、システムにおけるOracle Databaseのアップグレード計画に大きな影響を及ぼします。

オンプレミス環境でOracle Databaseを使用するユーザーは、以下の判断を迫られることになるでしょう。

  • Oracle Database 19cに移行する/使い続ける?
  • オンプレミス版Oracle Database 23aiの2025年内のリリースを待つ?

なお、上記の記事でも触れていますが、オンプレミス版Oracle Database 23aiのリリース延期に伴い、Oracle Database 19cのPremier Supportの終了日も2029年12月末に大幅延長されています。

明日の記事

以上が、Oracle Database分野のOracle ACE Proから見たオラクル10大NEWSです。

JPOUG Advent Calendar 2024 の明日2日目の記事は、wmo6hashさんに執筆いただく予定です。wmo6hashさん、よろしくお願いいたします!

プロフィール

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渡部 亮太

・Oracle ACE
・AWS Certified Solutions Architect - Associate
・ORACLE MASTER Platinum Oracle Database 11g, 12c 他多数

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