「データベースとはどのようなもの?」「データベースを使って何をできるの?」などの疑問を抱いていませんか。詳細がわからず困っている方は多いでしょう。データベースは、規則に従い整理された情報の集まりです。情報を効率よく活用できるなどのメリットがあります。ここでは、データベースの概要、種類などに加え、データベース管理システムやSQLなどについて解説しています。全体像を理解したい方は確認しておきましょう。
目次
データベースとは
一定の規則に基づき整理された情報の集まりです(検索に使用するソフトウェアなどを含むことがあります)。整理に関する規則が定義されていない情報の集まりは対象から外れます。一例として、カンマで区切って羅列した情報があげられます。
以上の条件を満たせば、紙に書いた情報もデータベースに含まれます(広義)。したがって、紙の名簿や電話帳などもデータベースのひとつと考えられます。ただし、一般的には、コンピューター上で集積、整理したものを指すこと多いでしょう(狭義)。
狭義のデータベースは、さまざまなサービスで活用されています。身近な例として、企業が導入している顧客管理ツール、病院が導入している電子カルテ、電車の発車時刻を調べる乗換案内サービスなどがあげられます。たとえば、顧客管理ツールでは、顧客の情報を「氏名」「年齢」「性別」「勤務先」「部署」「役職」「電話番号」の項目などで整理しているケースが多いでしょう。
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データベースの主な種類
データベースは、いくつかの種類にわかれます。主な種類は以下のとおりです。
【種類】
- リレーショナル型データベース(RDB)
- 階層型データベース
- ネットワーク型データベース
- 非リレーショナル型データベース(NoSQL)
ここでは、各種類について詳しく解説します。
リレーショナル型データベース(RDB)
集合論と述語理論を活用した種類です。主な特徴は、テーブル形式(表形式)で情報を格納することです。テーブルは行(レコード)と列(カラム)から成り立ちます。つまり、各行・各列に関連のある情報を格納したテーブル形式のものといえるでしょう。性質の異なる情報は別のテーブルを構成します。
ただし、それぞれのテーブルが無関係というわけではありません。たとえば、以下のテーブルはある会社の部署と社員を表しています。
部署テーブル
部署番号 | 部署名 |
10 | 営業部 |
15 | 総務部 |
社員テーブル
社員番号 | 部署番号 | 氏名 |
111 | 10 | 田中太郎 |
112 | 15 | 山田花子 |
上記のテーブルであれば、同じ部署番号をもつものは関係があると考えられます。この種類の強みは、ある列の共通データを用いて、複数のテーブルを関連付けられることです。構造がわかりやすいうえ扱いやすいため、最も広く利用されています。ただし、複雑な処理で遅くなる、規模の大きなデータを扱えないなどの特徴も備えます。
階層型データベース
ある階層のあるデータから下位階層のデータが枝分かれしている状態で配置されている構造を階層構造といいます。根から枝や葉が伸びているように見えるため木構造(ツリーストラクチャー)と呼ばれることもあります。身近な例として、企業の組織図があげられます。企業の組織図では、社長から総務部、営業部、開発部などへ、総務部、営業部、開発部から各部署へ枝分かれしているケースが一般的です。この構造をもつものを、階層型データベースといいます。
ポイントは、下位データ(子データ)が1つの上位データ(親データ)に従属していること、1つの上位データに対して複数の下位データが存在することです。あるデータに到達するルートが限定されるため、階層型データベースは検索を高速で行えます。ただし、下位データが複数の上位データをもつ場合は重複登録が必要になります。複雑なデータや階層構造をもたないデータには向いていません。
ネットワーク型データベース
関係するデータをつなげて複雑な構造をつくる種類です。構造が網状(ネットワーク)になるためネットワーク型と呼ばれています。
主な特徴は、下位データが複数の上位データをもてることです。したがって、下位データが2つ以上の上位データをもつ場合も重複登録を避けられます。たとえば、生徒Aが陸上部と放送部に所属していたとします。複数の上位データをもてない階層型データベースでは、重複登録をしなければなりません。複数の上位データをもてるネットワーク型データベースであれば、この問題は起こりません。
ただし、データ量が増えると構造が複雑になりがちです。運用にあたり専門的な知識を要することがあります。
非リレーショナル型データベース(NoSQL)
データベース言語のひとつであるSQLを使用しない種類です。SQLについては、この後で解説します。
主な特徴は、複数のサーバーでデータを保存できるため、規模の大きなデータを扱えることです。応答スピードが速い点も見逃せません。一般的に、これらの点がリレーショナル型データベース(RDB)より優れていると考えられています。SQLの知識を必要としない点も魅力です。
ただし、データを加工しにくい、データの整合性を保ちにくい、複雑な検索に向いていないなどの特徴もあわせもちます。メリットとデメリットがはっきりとしている種類といえるでしょう。特徴を踏まえて活用することが大切です。
SQLとは
1970年代に開発されたデータベース言語です。SQLの正式名称は「Structured Query Language」、日本語で構造化照会言語と訳されます。awsはSQLを次のように定義しています。
リレーショナルデータベースに情報を格納および処理するためのプログラミング言語です。
引用:aws「SQL とは何ですか?」
https://aws.amazon.com/jp/what-is/sql/
SQLはデータ定義言語、データ操作言語などとして機能します。前者は、データベースの構造を設計する言語、後者はデータベースを操作したり管理したりする言語です。つまりSQLを用いて、情報を最適化したり、情報を格納したり、情報を検索したりできます。
SQLは、多くのリレーショナル型データベースが使用するデータベース言語です。前述の通り、リレーショナル型は幅広く活用されています。SQLは重要性の高いデータベース言語といえるでしょう。
データベース管理システム(DBMS)とは
簡単に説明すると、データベースの運用や管理に関わるシステムです。データベース単体では、データを自動で整理したり保存したりできません。これらの操作を手動で行う必要があるのです。データベースをビジネスに活用する場合、データのスムーズな取り扱いが求められます。上記の問題を解決するため用いられているのがデータベース管理システム(DBMS)といえるでしょう。
同システム(DBMS)は、SQLを用いて操作します。具体的な機能はさまざまですが、作成、参照、更新、削除、テーブル間の関係定義などを行えるケースが多いでしょう。導入により、操作を効率よく行えるようになります。大量のデータを扱いやすくなる、複数人でアクセスできるようになる点もポイントです。実務において非常に重要なシステムと考えられます。
データベースとExcelの違いについて
データ管理は、Excelを始めとする表計算ソフトでも行えます。ただし、データベースとExcelの特徴は異なります。両者の主な違いをまとめると以下のとおりです。
項目 | データベース | Excel |
目的 | データの整理 | 表計算 |
保存できるデータ | 大量 | 大量のデータには向かない |
ユーザー数 | 複数人 | 1人または少人数 |
データベースは、データの整理、管理を目的とするツールです。これに対して、Excelは表計算を目的とします。したがって、両者の設計は大きく異なります。
データの整理などに特化しているデータベースは、原則として大量のデータを扱えます。Excelは、あくまでも表計算ソフトであるため、大量のデータの管理には向いていません。
同時に利用できるユーザー数にも違いがあります。データベースは多数のユーザーの利用、Excelは1人または少人数のユーザーの利用を想定して設計されています。前者は複数人で使用しても快適に操作できますが、後者は処理の遅延などが起こる恐れがあります。
データの入力方法にも違いがあるといえるでしょう。データベースは、トラブルが起こりにくい専用のフォームを用意しています。Excelは、セルに直接入力します。Excelは、入力時にトラブルが起こりやすいと考えられます。
データベース導入のメリット
データベースの導入には、さまざまなメリットがあります。代表的なメリットとして、以下の3点があげられます。
【3つのメリット】
- データを効率よく活用できる
- 簡単に更新できる
- バックアップできる
検索機能を使って必要なデータを簡単に見つけられるため、蓄積したデータを有効活用できます。検索にかかる労力を削減できる点もポイントです。また、自社のシステムと連携させて活用することもできます。既存のデータの価値を高められる可能性があります。
データの更新を簡単に行える点も魅力です。直接入力だけでなく、他のファイルから取り込むこともできます。直接入力では、入力規則を設けて、誤入力を防げます。
バックアップ機能を備えている点もメリットとしてあげられます。バックアップが自動で行われるため、何かしらの理由でデータが破損したときも復元できます。安心してデータを保存できるでしょう。
データベース導入のデメリット
データベースには、気を付けたいデメリットもあります。主なデメリットは、以下のとおりです。
【2つのデメリット】
- 適切に活用できないことがある
- 導入時にコストがかかることがある
目的を設定せずに導入すると、適切に活用できないことがあります。ビジネスにうまく活かせないためです。たとえば、実際のビジネスとかけ離れた設定で、検索に手間と時間がかかるなどが考えられます。目的をもとに活用方法を検討したうえで導入することが大切です。
導入時に、原則としてコストがかかる点にも注意が必要です。自社で構築する場合は、開発費に加え、サーバーなどの設備費もかかります。規模によってはまとまった金額になるため、詳細を確かめておくことが大切です。初期費用を抑えたい場合は、クラウドサービスの利用を検討するとよいかもしれません。月額利用料はかかりますが、開発費、設備費を削減できます。
データベースの導入が向いているケースと向いていないケース
データベースにはデメリットがあるため、導入が向いていないケースもあります。導入が向いている(メリットを実感しやすい)ケースと向いていない(デメリットを実感しやすい)ケースは以下のとおりです。
ケース | 特徴 |
導入が向いているケース |
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導入が向いていないケース |
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データを分析して新たな施策を立案したいなどと考えている場合は導入が向いているでしょう。データの保存だけが目的であれば、導入の必要性は低いと考えられます。コストをかけて導入しても、大きなメリットは得られないためです。上記を参考に、検討を進めてみてはいかがでしょうか。
データベース構築の方法と流れ
続いて、構築の方法と流れについて解説します。
データベースの構築方法
ポイントは、現実世界を適切に表現することです。現実世界の情報を、どのような構造でデータベース化するか検討します。この設計を適切に行うことが大切です。
データベースを構築するまでの流れ
①調査・分析
最初のプロセスで、対象となる情報を調査、分析します。具体的には、業務フローの調査、分析などが考えられます。結果をもとに、データ全体を構成する各要素を整理して関係をモデリングします。
②設計・開発
調査・分析で収集したデータをもとに、データベースを構築します。予め、データの処理方法や運用方法を検討しておくことがポイントです。データのインポートも行います。
③テスト
テストを実施して、想定通りに動作することを確かめます。テストでは、データを適切にインポートできていない、意図せずデータに重複が生じているなどのトラブルが起こりえます。実務を想定してテストを行うことが大切です。不具合が見つかった場合は修正します。
④運用・保守
運用・保守も欠かせない取り組みです。パフォーマンスを定期的にチェックする、バックアップを定期的にとるなどが考えられます。運用・保守を行える体制を構築しておくこと、必要に応じてシステムを更新することも大切です。
主なデータベース管理システムとは
データベース管理システムには、さまざまな選択肢があります。主なソフトウェアは次のとおりです。
【製品例】
- Oracle Databese
- Microsoft SQL Server
- MySQL
Oracle Databeseは、Oracle社が扱っているソフトウェアです。世界初の商用データベースとして開発されました。性能と安定性の高さが主な特徴です。日本を含む世界で、幅広く利用されています。
Microsoft SQL Serverは、Microsoft社が扱っているソフトウェアです。主な特徴は、Microsoftの製品と相性がよいことです。簡単に操作できる点も魅力といえるでしょう。
MySQLは、Oracle社が扱うオープンソースのデータベース管理システムです。Oracle Databeseに次ぐ人気を獲得していると考えられています。高速処理と信頼性の高さが魅力です。個人から大企業まで幅広く利用されています。
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データベース管理システムを活用して解決できる課題とは
データベース管理システムを活用すると、効率のよい運用を実現しやすくなります。自動で整理したり、重複登録を防いだりできるためです。運用にかかる負担を軽減できるでしょう。
データを有効活用しやすくなる点もポイントです。膨大なデータから特定の情報を簡単に検索、抽出などできるようになります。したがって、共通の属性をもつ顧客を抽出して、マーケティング施策を展開することも可能です。蓄積しているデータの価値を高められる可能性があります。
データベースは活用しやすく整理された情報の集まり
ここでは、データベースについて解説しました。データベースは、一定の規則に基づき整理された情報の集まりです。スムーズにデータを扱うため、データベース管理システムが活用されています。導入する主なメリットは、データを効率よく活用できる、バックアップできるなどです。ビジネスでデータを有効活用したいケースや大量のデータを管理するケースなどに向いています。データの管理方法や活用方法を見直したい方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。