「データベースにはどんな種類があるの?」「それぞれの特徴を理解したい」などと考えていませんか。基本的な知識を身につけたい方は多いでしょう。データベースには、階層型、ネットワーク型など、複数の種類があります。それぞれの特徴は、大きく異なります。ここでは、データベースの概要、役割、種類などを解説し、データベース管理システム(DBMS)の代表的な製品を紹介しています。理解を深めたい方は参考にしてください。
目次
データベースとは
一般的には、一定の規則に基づき利活用しやすいように整理された情報の集まりと定義されています。この定義に従うと、整理の方法が定まっていない情報の集まりは対象から外れます。大量のデータであっても、単に情報を羅列しているだけであれば、データベースとはいえないでしょう。一方で、規則に基づき情報が整理されていれば、紙媒体であってもデータベースと考えられます(広義)。ただし、最近ではコンピューター上で保存されたものを指すケースが一般的です(狭義)。
データベースは、データを納める箱のようなものと説明されることがあります。単体では仕分けなどを行えません。通常は、DBMS(データベース管理システム)を用いて管理します。DBMSは、データの更新、検索、削除などを効率よく行えるシステムです。
データベースは、身近なところで活用されています。一例としてあげられるのが、企業が管理している顧客リストです。多くの顧客リストは、顧客の氏名、年齢、性別、購買履歴などをデータベース化しています。このリストを活用して、マーケティング施策を展開しているところもあります。たとえば、特定の商品を購入した顧客を抽出して関連する商品を提案する、誕生月を迎えた顧客を抽出してクーポンを送付するなどが考えられます。すでに何かしらのデータベースと関わりをもっている方は多いでしょう。
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データベースの役割
データベースの主な役割は、大量のデータを一定の規則に基づき整理して保管することです。Excelなどの表計算ソフトでもデータを保管できますが、データの量が多くなると処理が遅くなるなどのトラブルが生じます。データベースは、サーバーを使用するため、大量のデータであっても問題なく保管できます。
DBMSがデータの管理を行ってくれる点やDBMSを用いてデータを手軽に抽出したり編集したりできる点も見逃せません。たとえば、一定の条件に該当するデータをまとめて移動することもできます。複数のスタッフが同時に操作することも可能です。データベースを導入すれば、人為的なミスを防ぎつつ業務の効率化を図れるでしょう。
データを安全に保管することもデータベースの役割です。具体的には、サーバーセキュリティやアクセス制限により情報を守ります。たとえば、アクセスできるスタッフを限定するなどが考えられます。
データベースの基本的な役割は以上のとおりです。データを安全かつ効率よく活用するため欠かせないといえるでしょう。
データベースの種類
データベースは、データモデルにより以下の種類にわかれます。データモデルは、データをグループに分けて保存する形式といえるでしょう。
【種類】
- 階層型データベース
- ネットワーク型データベース
- RDB(リレーショナルデータベース)
- NoSQL
ここからは、それぞれの特徴を解説します。
①階層型データベース
親要素に対し複数の子要素を関連付けられる構造を木構造(ツリーストラクチャー)、または階層構造といいます。階層が下がるにつれて枝分かれする点がポイントです。木構造の例として、部長の下層に課長1、課長2、課長1の下層に社員A、社員B、社員C、課長2の下層に社員D、社員E、社員Fを配置した組織図があげられます。階層型データベースは、木構造でデータを保管する種類です。
このタイプの強みは、あるデータに到達するルートが1つしかないことです。したがって、検索の処理をスピーディーに行える、データの矛盾が発生しにくいなどの特徴を備えます。
一方で、子要素が複数の親要素をもつ場合などでは重複登録が発生します。親要素は複数の子要素をもてるのに対し、子要素は複数の親要素をもてないためです。入力に手間がかかり、データが冗長化しやすい傾向があります。データの追加などを行う際に、構造を見直さなければならないケースがある点にも注意が必要です。柔軟性はあまり高くないと考えられています。
②ネットワーク型データベース
関連のあるデータをつないで、網状(ネットワーク)の構造でデータを保管する種類です。階層型との共通点は関連のあるデータをつなぐこと、階層型との主な違いは子要素が複数の親要素をもてることです。
このタイプの強みは、子要素が複数の親要素をもつ場合でも、重複登録が発生しないことといえるでしょう。たとえば、バスケットボール部と美術部(ともに親要素)に所属している生徒A(子要素)がいるとします。階層型はバスケットボール部と美術部に生徒Aを登録しなければなりません。ネットワーク型であれば、生徒Aをバスケットボール部と美術部に紐づけられます。したがって、重複登録は発生しません。ネットワーク型は、データが冗長化しにくいと考えられます。
ただし、データの管理は複雑になる傾向があります。運用にあたり、一定の知識、スキルを求められるケースが少なくありません。
③RDB(リレーショナルデータベース)
行(レコード)と列(カラム)で構成されるテーブルを使ってデータを保管する種類です。各テーブルを同じ性質のデータで構成します。性質が異なるデータは、別のテーブルで保管します。共通する列のデータを使って、異なるテーブルを関連付けられる点が特徴です。たとえば、以下のテーブルでは「部活番号」で関連性を把握できます。
学生テーブル
学生番号 | 部活番号 | 氏名 |
1 | 10 | 田中太郎 |
2 | 11 | 山田次郎 |
部活テーブル
部活番号 | 部活名 | 顧問番号 |
10 | 卓球部 | 101 |
11 | バスケットボール部 | 110 |
このタイプの強みは、複雑な情報を整理しやすいこととデータの整合性が高いことです。重複登録を避けられる点も魅力といえるでしょう。扱いやすいため、広く利用されています。ただし、膨大なデータを扱ったり、テーブルが複雑になったりすると、処理速度は遅くなる傾向があります。
④NoSQL
IBMは、NoSQLを次のように定義しています。
NoSQLは、「Not Only SQL」または「非SQL」とも呼ばれ、リレーショナル・データベースに見られる従来の構造の外部でデータの保存と照会を可能にするデータベース設計の手法です。
引用:IBM「NoSQLデータベースとは」
https://www.ibm.com/jp-ja/topics/nosql-databases
RDB以外のデータベースと考えることができるでしょう。つまり、テーブル以外の方法で、データを保管するデータベースといえます。データベース言語のSQLを使用しない点も特徴です。
NoSQLの強みは、膨大なデータを扱えること、膨大なデータでも速やかに処理できることです。ただし、データの整合性をとりにくい、複雑な処理を行いにくいなどのデメリットを併せもちます。NoSQLは、AIやビッグデータなどの領域で主に活用されています。
RDBとNoSQLの違い
以上の中で、現在主流となっているのがRDBとNoSQLです。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
構造
RDBは、同じ性質をもつ情報で構成されるテーブルを関連付けた構造です。NoSQLには、さまざまな構造があります。テーブル形式(テキストデータを扱う)のRDBは、画像データなどをもてません。NoSQLは、さまざまなデータを扱えます。
処理速度
NoSQLは高速処理を得意としています。これに対して、RDBは高速処理を得意としていません。データ量が多くなったり、テーブルが複雑になったりすると、処理が遅くなってしまいます。
一貫性
RDBは、一貫性のある処理を得意としています。Atomicity(原子性)、Consistency(一貫性)、Isolation(独立性)、Durability(永続性)で構成されるACID特性をもったトランザクションを行うためです。NoSQLは、サーバーを分散するため、データの一貫性を保証できません。
代表的なデータベース管理システム
データベースそのものに、データを自動で整理したり保存したりする機能はありません。これらの操作を行うため使用するのがデータベース管理システム(DBMS)です。DBMSには、さまざまな選択肢があります。ここでは、RDBMSとNoSQLにわけて、代表的な製品を紹介します。
RDBMSに該当するデータベース管理システム
MySQL
MySQLは、オープンソース型のデータベース管理システムで、無償で利用できるコミュニティ版と製品保守がついた有償版があります。コミュニティ版は無料で利用できる点も魅力です。主な特徴は、拡張性が高いことと処理速度が速いことです。大規模なデータベース処理を目的に開発されている点も見逃せません。MySQLは、個人から大企業まで幅広く利用されています。
Oracle Database
Oracle社が開発、販売しているRDBMSです。世界初の商用RDBMSとして1979年に誕生しました。以降、顧客ニーズ、IT環境の変化にあわせて機能の拡張を続けています。主な特徴は、ユーザーをサポートするさまざまな拡張機能を搭載していることです。具体的には、データベース管理の複雑さ、コストを軽減するAIなどを搭載しています。処理速度の速さ、堅牢性の高さも魅力です。ただし、導入にはまとまった金額がかかります。
SQL Server
Microsoft社が扱っているRDBMSです。Microsoft SQL Serverと呼ばれることもあります。主な特徴は、Microsoftのプログラミング言語と相性がよいことです。さまざまな管理ツールを用意している点も特徴としてあげられます。具体的には、直感的な操作を実現してくれるSQL Server Management Studioなどを用意しています。Oracle Databaseより安価で導入できる点も魅力といえるでしょう。ただし、バージョンが頻繁に変更される点には注意が必要です。アップデートにより、予期していなかった影響が現れることもあります。
NoSQLに該当するデータベース管理システム
Mongo DB
Mongo DB社が開発、サポートを行っているオープンソースのNoSQL(DBMS)です。「開発者が抱えるデータの課題を解決する」を理念に掲げています。NoSQLの中で、最も広く利用されていると考えられています。主な特徴は、データの処理や保管を、テーブルではなくドキュメントで行うことです。柔軟性の高さが魅力のひとつといえるでしょう。処理速度の速さも強みとしてあげられます。
HBase
Apacheソフトウェア財団のHadoopプロジェクトで開発されたオープンソースのNoSQL(DBMS)です。主な特徴として、システムの拡張性が高いことがあげられます。処理速度の速さも大きな特徴です。この点に着目して、リアルタイムでのデータ処理を必要とするさまざまなサービスに利用されています。ただし、複雑な処理には、あまり適していません。
Cassandra
Facebook社が大規模データを扱うため開発したキーバリュー型NoSQL(DBMS)です。現在は、Apacheソフトウェア財団が開発元になっています。主な特徴は、書き込み速度が速いことです。高いパフォーマンスを期待できます。特定のノードがダウンしても、処理を継続できる点も魅力です(マスターレス)。ただし、複雑な処理には向いていません。また、整合性もとりにくい傾向があります。
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データベースに関する資格
データベースを扱うには、一定の知識やスキルが必要です。知識やスキルを効率よく身につけたい方は、データベースに関する資格を取得するとよいかもしれません。資格を取得すれば、専門家であることも証明できます。データベースに関する主な資格として以下の2つがあげられます。
ORACLE MASTER
Oracle University Japanは、ORACLE MASTERを次のように説明しています。
Oracle Database の管理スキルを証明する資格
Oracle University Japan「ORACLE MASTER Portal – be an ORACLE MASTER – | オラクル認定資格制度」
https://www.oracle.com/jp/education/index-172250-ja.html
データベースエンジニアに必要なスキルを体系的に身につけられます。以下のグレードが設けられている点も特徴です。
認定資格名 | 証明するスキル |
ORACLE MASTER Bronze DBA | DBの基礎知識 |
ORACLE MASTER Silver DBA | 日常の運用管理と基本的なSQLの知識 |
ORACLE MASTER Gold DBA | 設計、環境構築、運用設計 |
ORACLE MASTER Platinum DBA | ミッション・クリティカルなシステムで最適な設計などを行うスキル |
ORACLE MASTER Silver SQL DBA2019 | SQLの知識全般 |
受検にあたりGoldはSilver資格など、PlatinumはGold資格などを求められます。
データベーススペシャリスト試験
経済産業省が認定を行っている国家資格です。試験を実施しているのは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)IT人材育成センター国家資格・試験部です。IPAは、対象者像を次のように説明しています。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者
引用:IPA独立行政法人情報処理推進機構「データベーススペシャリスト試験」
https://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/db.html
試験の実施時期は秋期(10月)、試験の回数は年1回、令和5年度秋期情報処理技術者試験における合格率は18.5%、合格者平均年齢は30.8歳です。
出典:IPA独立行政法人情報処理推進機構「令和5年度秋期情報処理技術者試験(応用情報技術者試験、高度試験)及び情報処理安全確保支援士試験の合格発表について」
https://www.ipa.go.jp/news/2023/shiken/ex20231221.html
データベースは種類を理解して活用
ここでは、データベースとデータベース管理システム(DBMS)の主な製品について解説しました。データベースは階層型、ネットワーク型、RDB、NoSQLにわかれます。現在、主に使用されているのはRDBとNoSQLです。RDBに該当する主なDBMSとしてOracle Database、NoSQLに該当する主なDBMSとしてMongo DBがあげられます。データベースの管理には、専門的な知識とスキルが必要です。業務でデータベースを扱いたい方は、資格取得を検討するとよいでしょう。