OCIは、インフラからアプリケーション開発まで幅広いサービスを提供するOracleのクラウドプラットフォームです。
IaaSやPaaSをはじめとする多彩なサービスを組み合わせることで、システムの構築から運用までを効率的に進められます。
本記事では、OCIの特徴や提供サービスの種類、メリット・デメリットを整理し、ほかのクラウドとの費用比較も交えて解説します。
クラウド導入やデータベース利用を検討している方は、参考にしてください。
目次
そもそもOCIとは
OCI(Oracle Cloud Infrastructure)は、オラクル社が提供するクラウドサービス群の一部であり、IaaSやPaaSといった基盤・プラットフォーム領域をカバーするソリューションです。
仮想マシンやストレージ、ネットワークといったインフラから、データベースや分析基盤などの高度なサービスまでを提供し、幅広い業種・用途に対応します。
オンプレミスでの利用実績が豊富なOracle製品との親和性が高く、既存資産を生かしたクラウド移行を検討する企業に適しています。 昨今ではOCI利用企業も大きく増加しており、Oracle社は成長率が最も高いクラウドプロバイダーのひとつに数えられています。
【出典】:Publickey「クラウドインフラのシェア、AWSがついに30%を切る。Azureは22%と着実に成長。2025年第1四半期、Synergy Researchの調査結果」
ここではOCIの強みと弱みを整理し、導入判断の参考になるポイントを見ていきましょう。
OCIの強みと弱み
OCIの大きな強みは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方に対応できる柔軟性です。
Oracle Cloud@CustomerやDedicated Regionといったサービスを活用すれば、自社データセンター内でクラウド環境を構築でき、セキュリティや規制要件への対応も容易です。
また、Oracle DatabaseやWebLogicなどオンプレミスのOracle製品をそのままクラウドに移行でき、ライセンス数の節約や高いコストパフォーマンスも期待できます。
さらに、ISMAP準拠の多層防御による高水準のセキュリティも強みです。
一方で、AWSやAzureと比べるとサービス数は少なく、情報公開量も限られています。
そのため、問題発生時には外部情報を得にくく、ベンダーサポートへの依存度が高くなる傾向があります。
ただし、基本的な機能は十分揃っており、要件を満たす範囲であれば導入効果を十分に発揮できます。
OCIが提供する主なサービス
OCI(Oracle Cloud Infrastructure)は、インフラ基盤からアプリケーション実行環境まで、幅広いクラウドサービスを提供しています。
ここでは、それぞれの概要と特徴について見ていきましょう。
IaaS
IaaSは、サーバ・ストレージ・ネットワークなどのインフラ部分をクラウド上で提供するサービスです。
利用者はOSやミドルウェア、アプリケーションの構築・管理を自由に行えます。そのため高いカスタマイズ性を維持しつつ、物理的な設備投資や保守作業を削減できます。
OCIのIaaSは、仮想マシンやベアメタルインスタンスをはじめ、用途に応じた高速ストレージ、セキュアなネットワーク機能を備え、スケーラブルで信頼性の高い環境を提供します。
そのため、開発から大規模ワークロードの稼働まで、多様なニーズに対応できます。
PaaS
PaaSは、アプリケーション開発や運用に必要なプラットフォームを、インターネット経由で利用できるサービスです。
OSやミドルウェア、データベースなどの基盤はOCI側で運用管理され、利用者はアプリケーションの開発や運用に集中できます。
OCIのPaaSは、Exadata Cloud ServiceやOracle Container Engine for Kubernetesなど、高度なデータ処理やコンテナ管理を支援するサービスを多数揃えています。
開発スピードの向上、運用負荷の軽減、そして柔軟なスケーリングが可能となり、ビジネス要件に応じた最適なアプリケーション環境を構築できます。
OCIが提供するIaaSサービス
OCI(Oracle Cloud Infrastructure)が提供するIaaSは、企業の基幹システムや業務アプリケーションの安定稼働を支える高性能かつ柔軟なインフラ環境です。
ここでは、OCIのIaaSを構成する主なサービスについて解説します。
Compute
Computeは、仮想マシンやベアメタルサーバなどの計算リソースを提供するサービスです。
開発環境から大規模処理まで要件に応じた柔軟な構成が可能で、CPUやメモリ構成を自由に選択できる「シェイプ」により、性能とコストの最適化が実現。
専有環境が必要な場合はベアメタルインスタンス、汎用的な用途には仮想マシンを選択すれば、ワークロード特性に合わせた効率的な運用が可能です。
Storage
Storageは、用途に応じた複数のストレージオプションを備えており、データの保存・アクセス・バックアップを効率的に実施できます。
高速処理に適したローカルNVMe、永続的なデータ保管に向くブロックボリューム、共有利用が可能なファイルストレージ、そして大容量非構造化データの保管に最適なオブジェクトストレージなどが用意されています。
また、アーカイブストレージを活用すれば、アクセス頻度の低いデータを低コストで長期保存できる点もメリットです。
これらを組み合わせることで、コスト効率とパフォーマンスのバランスを保ちながら最適なデータ管理が可能です。
Networking
Networkingは、安全で拡張性の高いネットワーク環境をクラウド上に構築できるサービスです。
ユーザーはVirtual Cloud Network(VCN)を作成し、オンプレミス同様のネットワーク構成をクラウド上に再現できます。
さらに、ロードバランサによるトラフィック分散、Site-to-Site VPNやFastConnectによるセキュアで高速な接続など、多彩なネットワーク機能を備えています。
OCIが提供するPaaSサービス
OCI(Oracle Cloud Infrastructure)のPaaSは、アプリケーションやデータベースの開発・運用に必要な基盤をクラウド上で提供し、開発者や運用担当者の作業負担を大幅に軽減します。
OCIが提供する代表的なPaaSサービスについて見ていきましょう。
Database Cloud Service
Database Cloud Serviceは、世界的なシェアを誇るOracle Databaseをはじめ、MySQLやNoSQLなどをクラウド環境で利用できるサービスです。
オンプレミス版と同等の構成や機能をクラウド上で再現できるため、既存の知識や運用ノウハウをそのまま活用できます。
スケーリングやバックアップ、セキュリティ管理などはOracleが提供するツールや機能で効率化され、従量課金制により必要な分だけのリソース利用が可能です。
Oracle Container Engine for Kubernetes
Oracle Container Engine for Kubernetes(OKE)は、コンテナ化されたアプリケーションを効率的にデプロイ・管理できるマネージドKubernetesサービスです。
高可用性のクラスタ環境を簡単に構築でき、OCIのネットワーク・ストレージサービスとの統合によって拡張性やセキュリティも確保できます。
コンテナベースのアプリ開発やマイクロサービスアーキテクチャの導入を検討している企業に適したサービスです。
Oracle Analytics Cloud
Oracle Analytics Cloudは、企業データを多角的に分析・可視化できる包括的な分析プラットフォームです。
データ取り込みから加工、ダッシュボードによる可視化まで一貫して対応でき、さらに組み込みのAIや機械学習機能で高度な予測分析も行えます。
モバイル端末からもアクセスできるため、場所を選ばず迅速な意思決定を支援します。
Oracle Cloud Data Science Platform
Oracle Cloud Data Science Platformは、データサイエンス業務に特化したクラウドサービスで、機械学習モデルの構築・学習・デプロイを一元的に管理できます。
チームでの共同作業を前提に設計されており、データの前処理や特徴量エンジニアリング、モデルの比較・評価までを効率的に進められます。
大規模データ分析やAI活用を推進する企業に有効なプラットフォームです。
Oracle Blockchain Platform
Oracle Blockchain Platformは、Hyperledger Fabricを基盤としたエンタープライズ向けブロックチェーンサービスです。
安全かつ改ざん耐性の高い分散型台帳を提供し、スマートコントラクトを活用した業務プロセスの自動化やトレーサビリティの確保を実現します。
サプライチェーン管理や契約管理など、信頼性の高いデータ共有が求められる領域で幅広く利用されています。
【関連記事】:Oracle Data Guardとは?OCI上での構成手順を解説!
OCIとほかのクラウドサービスとの費用の比較
クラウドサービスを選定する際、性能や機能に加えて重要になるのが費用面です。
特に従量課金制を採用するクラウドでは、利用するリソースや構成によって月額料金が大きく変動します。
ここでは、代表的なサービスであるコンピュートとストレージについて、OCIとAWSの料金を比較しました。
サービス | OCI | AWS |
コンピュート(仮想マシン1インスタンス・1か月利用、100GBストレージ込み) | 74.81USD(VM.Standard.E4.Flex 2OCPU 32GB) | 206.78USD(r5a.xlarge 4vCPU 32GB) |
ストレージ(オブジェクトストレージ Standard 1TB) | 25.24USD | 25.60USD |
※2023年10月時点の各社公式ツールを用いた試算
試算の結果、コンピュートにおいてはOCIの方がAWSよりも大幅に低コストで利用できることが明らかになりました。
一方、ストレージの料金差は小さく、両者はほぼ同じ価格帯です。
【関連記事】:Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とは?サービス構成や特徴を解説
OCIサービス活用のポイントと選び方
本記事では、OCIの基本概要からIaaS・PaaSの主要サービス、そしてそれぞれのメリット・デメリットについて解説しました。
OCIは幅広いサービス群と柔軟な構成が魅力ですが、用途やコスト構造を理解した上で選択する必要があります。
ほかのクラウドとの比較結果も踏まえ、自社の要件に適したサービス構成を見極め、長期的な運用計画に役立てることが大切です。