「自社に合うクラウドサービスを導入したい」と思われたとき、シェアを参考にする企業のご担当者様は多いのではないでしょうか。
数多くあるクラウドサービスのなかでも、Oracle Cloudは成長を遂げており、利用する企業は少しずつ増加しています。
そこで今回は、Oracle Cloudのシェアがどの程度なのかを解説します。
導入するメリット・デメリットもあわせてお伝えしますので、ぜひご一読ください。
目次
Oracle Cloudとはどういうものか
Oracle Cloudとは、Oracle社が提供している企業向けのクラウドサービスです。
日本では2014年にリリースされ、現在もさまざまな企業で利用されています。
Oracle Cloudでは100を超える豊富なサービスが提供されており、用途に応じて自由に組み合わせることができます。
インフラストラクチャ(IaaS)とプラットフォーム(PaaS)、アプリケーション(SaaS)のすべての領域をカバーできるため、あらゆるビジネスシーンで役立つはずです。
また、ビジネスには欠かせない高いセキュリティや柔軟性、拡張性などにも優れています。
さらにOracle Cloudは、Oracle社のオンプレミス製品と使い勝手が同様です。
そのため、移行後も「慣れない操作で作業が滞ってしまう」という事態に陥らずに済むといえます。
クラウドインフラ市場におけるOracle Cloudのシェア
クラウドインフラ市場において、Oracle Cloudのシェアはどのようになっているのかを、2024年8月にSynergy Research Group社が公開した情報をもとに見ていきましょう。
Synergy Research Group社の調査では、Oracle社を含む7つの企業が提供しているクラウドサービスのうち、Oracle Cloudのシェアは5%以下だという結果が出ています。
ランキングでいうと、第5位となります。
この数値だけをみると、シェアが高いとはあまりいえません。
しかしOracle Cloudのシェアは年々右肩上がりになっており、前年度と比べても成長率が高いようです。
こうした結果から、Oracle Cloudを利用する企業は増加傾向にあると考えられます。
参照元:Synergy Research Group『Cloud Market Growth Stays Strong in Q2 While Amazon, Google and Oracle Nudge Higher』
Oracle Cloudのサービス
Oracle Cloudが提供しているサービスは多岐にわたりますが、大きく2つのタイプに分けられます。
一つは、インフラストラクチャ(IaaS)とプラットフォーム(PaaS)を提供している、Oracle Cloud Infrastructureです。
そしてもう一つには、アプリケーション(SaaS)を提供しているOracle Cloud Applicationsが挙げられます。
本項では、これらの特徴を深掘りします。
Oracle Cloud Infrastructure
Oracle Cloud Infrastructureでは、可用性の高い環境下で、一連のアプリケーションを構築したり実行したりすることができます。
インフラストラクチャ(IaaS)とプラットフォーム(PaaS)の2つが提供されているがゆえ、多種多様で柔軟性のあるサービスといえます。
そもそもインフラストラクチャ(IaaS)とプラットフォーム(PaaS)とは、どのようなものなのでしょうか。
IaaS(イアース)は、システムを稼働させる際に必要となるサーバやストレージなどのインフラを、インターネットを経由して提供するクラウドサービスです。
自社でサーバを購入するコストやインフラを運用する手間を省けるため、必要なときにサッと活用できるのが魅力です。
IaaSのインフラにくわえて、アプリケーションの開発に必要なプラットフォームも利用可能なクラウドサービスを、PaaS(パース)といいます。
サーバシステムやミドルウェア、OSなどが提供され、アプリケーションの開発にかかる費用を抑えられる点が利点です。
Oracle Cloud Infrastructureは、この2つが組み合わさっており、幅広い場面で役立ちます。
また、用途によって使うべきサービスが異なりますので、どのような種類があるのかは覚えておきたいところです。
その一例を、以下の表にまとめました。
【Oracle Cloud Infrastructureで提供されているサービスの種類】
種類 | 用途・概要 |
・Kubernetes Engine
・Functions |
アプリケーションを稼働させる仮想環境 |
・AI Services
・In-Database Machine Learning ・Anomaly Detection |
AIを使った機械学習や、モデルの開発に使用するプラットフォーム |
・Archive Storage
・Block Volumes ・File Storage ・Object Storage |
メディアコンテンツやバックアップといった、非構造化データの格納などに役立つストレージ |
・Autonomous Database
・Standard Database Service ・MySQL HeatWave ・Search Service with OpenSearch |
データベースを稼働させるための機能 |
このほかにもOracle Cloud Infrastructureでは、さまざまなサービスが提供されています。
自社のニーズに合わせて必要なものを選択できるため、一度導入すれば、ビジネスシーンでなくてはならない存在となるでしょう。
Oracle Cloud Applications
デジタルインフラからプラットフォーム、ソフトウェアまでを含んでいるのが、Oracle Cloud Applicationsです。
インターネットを経由することでソフトウェアの利用が可能になる、つまりSaaS(サーズ)を提供しているサービスと覚えておくとよいでしょう。
ビジネスを最適化するためのアプリケーションがそろっており、従来よりも迅速かつ的確に業務を進められます。
そんなOracle Cloud Applicationsにも、Oracle Cloud Infrastructureと同様にいくつかの種類があります。
【Oracle Cloud Applicationsで提供しているサービスの種類】
種類 | 用途・概要 |
Oracle Enterprise Resource Planning | 財務状況やプロジェクトの進捗の管理、仕入れの分析などを実施するためのアプリケーション |
Oracle Human Capital Management | 従業員の管理をスムーズに進めるためのアプリケーション |
Oracle Supply Chain Management | 製品の製造やデータ、在庫などを管理するためのアプリケーション |
Oracle Marketing | 顧客のニーズを予測したりコンテンツを管理したりと、さまざまなマーケティング活動を支援するためのアプリケーション |
Oracle Sales | 販売計画や営業実績の管理など、見込み客に最適なタイミングでアプローチをかけるための支援をするアプリケーション |
Oracle Service | 顧客の問い合わせに対して、円滑に対応するためのアプリケーション |
上記からもOracle Cloud Applicationsでは、業務をサポートするためのアプリケーションが提供されていることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
業務の生産性や自社の信頼性の向上が期待できるので、利用すればビジネスがさらに好転するはずです。
Oracle Cloudのメリット
ここまでご覧になりOracle Cloudに関して、理解が深まってきたことでしょう。
コストの削減やパフォーマンスの向上などが叶うクラウドサービスですが、導入するとどのようなメリットを得られるのでしょうか。
メリット②オンプレミスからスムーズに移行できる
Oracle社のオンプレミス製品を利用している場合は、クラウドにスムーズに移行できます。
というのもOracle社では、クラウドとオンプレミスで同様の製品を提供しているためです。
システムの技術や構成も共通点が多いため、移行を円滑に進められるわけです。
さらに移行後の運用でも、
オンプレミスで培ったノウハウを無駄にせず、長く活かせるのはOracle Cloudならではの利点です。
メリット③セキュリティのレベルが高い
数あるクラウドサービスのなかでも、Oracle Cloudはセキュリティのレベルが高い点が特徴です。
数十年にもわたって、データやアプリケーションの保護に携わってきたOracle社だからこそ、大切なデータを守るノウハウが詰め込まれているのです。
そしてOracle Cloudは、クラウドサービスの安全性を証明する“ISMAP”にも登録されています。
ISMAPとは、政府機関が利用するクラウドサービスのセキュリティが、一定以上のレベルを保っているかどうかを評価・認証する制度です。
“政府情報システムのためのセキュリティ制度”ともよばれ、デジタル庁や総務省、経済産業省が運営しています。
こうした点からも、Oracle Cloudのセキュリティがハイレベルであり、信頼性もあることがうかがえるでしょう。
Oracle Cloudのデメリット
利用者にとって安心材料となる点が多いOracle Cloudですが、懸念点があるのも事実です。
導入してから「思っていたよりも使いにくい」「自社には合わなかった」といった事態に陥らないよう、デメリットも事前に押さえておくのが賢明です。
デメリット①提供しているサービスの種類が少ない
まずOracle Cloudのデメリットとして挙げられるのが、提供しているサービスの種類の少なさです。
Oracle Cloudでは100を超えるサービスを提供していますが、クラウドインフラ市場においては種類が多いとは言い切れません。
シェアの高いAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureでは、200種類以上ものサービスを提供しており、その差は歴然です。
クラウドサービスのなかでもOracle Cloudは後発であることから、提供される種類が少ない傾向にあります。
種類が少ないとはいえ、一般的なニーズを満たせるサービスはそろっています。
年々サービス数も増えているため「Oracle Cloudを導入したけれど、何もできない」と悩むことは少ないでしょう。
ただし「こういう点もカバーできるクラウドサービスが使いたい」という願望がある場合は、Oracle Cloudでも対応しているかどうかを事前に確認するのがベターです。
デメリット②技術情報が少ない
後発かつまだ利用者が少ないクラウドサービスであるため、技術に関する情報があまり公開されていない点もデメリットの一つです。
一般的にシェアの高いクラウドサービスでは、インターネット上にトラブルシューティングや使用する際のノウハウなどが公開されています。
なんらかの問題や疑問が生じたとしても、検索すればすぐに解決できるため担当者様にとってはうれしいものです。
しかし、Oracle Cloudの場合は情報が見つけにくいがゆえ、問題や疑問の解決に時間を要します。
基本的には、Oracle社のドキュメントやカスタマーサポートなどから情報を得る必要があり、そのぶん手間がかかってしまうのはOracle Cloudの懸念点となります。
なお、カスタマーサポートの口コミでは「手厚い支援を受けられる」とポジティブな声も上がっているため、わからないことを徹底的に解決できるのは良い点かもしれません。
Oracle Cloudの導入が向いている企業は?
Oracle Cloudは、JTBや日産自動車、三井不動産などの大企業はもちろん中小企業まで、企業規模や業種を問わず、さまざまな企業が導入しています。
どのような企業でも使用しやすいクラウドサービスですが「本当に自社に向いているだろうか?」と不安に感じることもあるかもしれません。
では、Oracle Cloudの導入が向いている企業には、どのような特徴があるのでしょうか。
Oracle製品を活用している企業
Oracle Cloudは、Oracle社のオンプレミス製品を活用している企業に向いています。
クラウドとオンプレミスで製品に違いがないため、移行時に無駄な手間がかからないうえ、移行後の操作で困ることもありません。
さらに、サーバやデータベースなどをクラウドに持ち込めるので、不要なコストをかけずに移行できます。
利用しているOracle製品のハードディスクの寿命が尽きた場合や、システムの設計に時間をかけたくない場合には導入を検討するとよいでしょう。
一般的なニーズの範囲内でクラウドを活用したい企業
「基本的な機能があればよい」とお考えの企業にも、Oracle Cloudがぴったりです。
先ほどお伝えしたように、ほかのクラウドサービスと比較するとOracle Cloudが提供しているサービスの種類はあまり多くありません。
しかし一般的なニーズを満たせるサービスはそろっていますので、用途が決まっていたり使いやすさを重視したりする場合は、Oracle Cloudが適しています。
ニッチなニーズには応えられない可能性もありますが、基本的な方法で活用するのであれば不満を抱くことはないはずです。
Oracle Cloudのシェアは5%以下。年々上昇し、成長が見込まれるクラウドサービス
今回は、Oracle Cloudのシェアを、導入する利点・欠点とともに解説しました。
Oracle Cloudは後発組のクラウドサービスであるため、現時点のシェアは5%以下と、それほど高くはありません。
しかし年々上昇しているため、導入する企業は増えてきているのが現状です。
Oracle Cloudのメリットとしては、オンプレミスからの移行がスムーズに実施できたりする点が挙げられます。
一方で、提供されているサービスの種類や技術情報が少ない点は懸念点です。
Oracle Cloudへの移行や導入に際して不安を抱えている企業のご担当者様は、ぜひコーソルにご相談ください。
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