OCIのテナンシは、クラウド環境全体を管理する基盤となる単位です。
業務委託やデータベース導入を進める際は、テナンシの構造や役割を正しく理解し、コンパートメントの活用や権限管理、コスト最適化を意識しましょう。
この記事では、OCIにおけるテナンシの基本と、サービス利用時に押さえておきたい実践的なポイントを解説します。
クラウド環境の効率的な運用を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
目次
テナンシとは?
OCIでアカウントを開設すると、自動的に「テナンシ」と呼ばれる単位が1つ割り当てられます。
これはOCI環境全体を管理するための最上位の枠組みであり、アカウントに紐づく論理的な管理領域です。
テナンシ名はアカウント作成時に設定でき、ログイン後は画面右上のアイコンから確認可能です。
必要に応じて詳細ページにアクセスすれば、契約情報や設定内容を把握できます。
初期段階では「アカウントに紐づく管理領域」という理解で十分です。
運用が進むにつれて、コンパートメントや権限管理などの仕組みと合わせて理解を深めることで、より効率的なクラウド活用が可能になります。
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テナンシの中で分けられるコンパートメント
コンパートメントとは、OCI内のリソースを整理・管理するための論理的な領域で、いわばテナンシの中に設ける「管理用の箱」のような存在といえます。
すべてのリソースは必ずいずれかのコンパートメントに所属し、用途や組織構造に応じて自由に分けられます。
例えば、部署やプロジェクト単位でコンパートメントを作成すれば、管理や運用をより効率的に進められます。
また、階層構造を利用することで最大6段階まで細かく分類でき、複数環境や複数リージョンにも対応可能です。
ここからは、コンパートメントを分けることで得られる具体的な利点を解説します。
コンパートメントを分ける利点は?
コンパートメントを活用すると、権限やコスト、リソースの管理が柔軟かつ効率的になります。
組織やプロジェクトの運用方針に合わせて分割すれば、セキュリティやコスト面でのコントロールが容易になり、業務全体のパフォーマンス向上にもつながります。
ここからは、コンパートメントを分けることで得られる利点を解説します。
権限管理が容易にできるようになる
コンパートメント単位でアクセス権限を設定できるため、部署やプロジェクトごとに適切な操作範囲を定義できます。
特定のコンパートメントだけに管理権限を与える、閲覧権限のみに制限することも可能です。
不要な操作や誤操作を防ぎ、セキュリティレベルを高めることができます。
コスト管理にかかる手間が減る
コンパートメントごとに利用状況やコストを把握できるため、部署やプロジェクト単位での予算管理が容易になります。
1つのテナンシ内で複数の利用部門を抱えていても、個別に契約を分ける必要がなく、請求の集約と内部精算がスムーズに進められます。
リソースの分割が可能になる
本番環境と開発環境など、用途に応じてリソースを明確に分けられます。
そのため、異なる環境間での干渉を防ぎ、管理や運用を安全かつ効率的に進めることが可能です。
また、階層構造を活用すれば、さらに細かいチームやプロジェクト単位でのリソース分割も可能です。
OCIを利用する際に押さえておきたいポイント
OCIを効果的に活用するには、リソースを作成するだけでなく運用管理やセキュリティ、コスト面での工夫が欠かせません。
OCI特有の概念であるコンパートメントの使い方や、ユーザー権限の適切な設定、料金の把握といった要素は、安定した運用と無駄のないクラウド利用につながります。
ここでは、OCIを導入する前に知っておくべき3つのポイントを見ていきましょう。
ポイント①コンパートメントを適切に活用する
コンパートメントは、テナンシ内で複数のシステムや環境を整理・管理するための仕組みです。
部署やプロジェクトごとにコンパートメントを作成することで、利用目的や環境に応じたリソースの分離が可能になります。
例えば、開発環境と本番環境を分けて配置すれば、作業の影響範囲を限定でき、運用リスクの軽減につながります。
また、ユーザーを束ねるグループをコンパートメントと関連付けてアクセス権を設定できるため、必要な人だけが必要なリソースにアクセスできる状態を簡単に作れます。
リソースがコンパートメントに束ねられているので効率的な権限管理が可能になり、運用負担を大きく減らせるはずです。
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ポイント②管理者ユーザーの利用を控える
管理者ユーザーはテナンシ全体に対して強い権限をもち、あらゆる操作が可能です。
しかし、この権限は便利である一方で、誤操作やセキュリティリスクの原因にもなります。
そのため、日常的な作業では管理者ユーザーの利用を避け、必要な権限だけを付与したユーザーを作成して運用することが大切です。
OCIではポリシーを定義し、それをグループに割り当て、ユーザーを所属させる形で権限を管理します。
そうすることで業務内容に合わせた権限設計が可能となり、セキュリティを確保しながら効率的な作業環境を維持できます。
ポイント③費用を意識する
OCIの料金体系は、使った分だけ支払う従量課金制(Pay As You Go)と、あらかじめ購入したクレジットを消費する月額クレジット制(Monthly Flex)の2種類です。
いずれの場合も、利用状況を把握しながら運用しましょう。
OCIコンソールの「コスト分析」機能では、期間やコンパートメント、サービスごとの利用額を簡単に確認できます。
さらに「予算アラート」を設定すれば、想定外の利用増加にも素早く対応でき、コストの最適化につながるでしょう。
クラウドの利用拡大に伴い、費用管理の精度は運用成功を左右する重要な要素となります。
OCIテナンシを活用した効率的なクラウド運用の実現を
今回は、OCIにおけるテナンシの基本構造と、サービス利用時に意識すべきポイントを解説しました。
テナンシを正しく理解し、コンパートメントを適切に運用することで、権限管理やコスト管理の効率化が可能になります。
また、管理者権限の乱用を避け、費用を常に意識すれば安定的かつ効率的なクラウド環境の構築につながります。
OCIの特性を最大限に活かし、ビジネスの成長を支える基盤として積極的に活用してみてください。