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Oracle Database 19cとは何か? どういう位置づけのリリースなのか?

渡部です。Oracle Database 19cはOracle Databaseを利用してゆくにあたって非常に重要なリリースです。 いくつかの観点から、Oracle Database 19cの位置づけについて整理しておきます。

長期間サポートとしての19c

19cは、年次リリースモデルにおける"Long Term Release"として位置づけられ、他のリリースよりもPremier Supportの期間が長いです。また、3年間のExtended Supportが提供されます。

現在存在するLong Term Releaseは、19cのみです。 このため、Oracle Database 11g/12cからの移行先リリースは、原則的に19cに限定されます。

年次リリースモデルについては、以下の資料を参照ください。

また、コーソルカナダ ブログの以下の記事も有用です。

Long Term ReleaseとInnovation Releaseのサポート期間

Long Term Release(19c)とInnovation Release(19c以外)のサポート期間を比較します。

                    Long Term Release   Innovation Release
                    ------------------- -------------------
Premier Support     5年間               2年間
Extended Support    3年間               なし

Oracle Database 19cのサポート期間(2020年7月時点)

2020年7月時点で予定されている19cのサポート期間は以下の通りです。

  • Premier Support終了: 2024年4月
  • Extended Support終了: 2027年4月
  • Sustaining Support終了: 期限なし(無期限)

Oracle Life Time Support

また、少し細かい話をすると、オラクル製品のサポート期間は無期限です(= "Oracle Lifetime Support")。サポート期間が有限なのは、Premier Supportです。

Oracle Database 19cの無償Extended Support(2023年8月追記)

2023年8月時点では、2年間の期間限定で無償でExtended Supportが提供されます。詳細は以下をご確認ください。

Oracle Database 19c 無償Extend Support期間が1年から2年に延長

マルチテナント構成と従来型構成(非マルチテナント構成)をつなぐリリース

Oracle Database 12cから、データベース統合技術としてマルチテナント機能が導入されました。

それ以降、従来型構成(非マルチテナント構成、非CDB構成)と新しいマルチテナント構成(CDB構成)が併存する形にありましたが、 Oracle Database 19cはマルチテナント構成に向けた動きにつながる、転機となるリリースになりそうです。

追加費用なし/全エディションで3PDBまでのマルチテナント構成をサポート

従来、PDBを複数個ホストするマルチテナント構成には、有償のマルチテナントオプションが必要でした。 このため、マルチテナントオプションを未購入のEnterprise Editionや、そもそもマルチテナントオプションを使用できないStandard Edtiion 2では、PDBを1個だけホストするシングルテナント構成か、従来からあるいわゆる通常のシングル構成(非CDB構成)しか使用できませんでした。

しかし、19cから、Standard Edition 2やマルチテナントオプションを未購入のEnterprise Editionにおいても、PDB数が3に限られますが、マルチテナント構成が許されました。

19c Standard Editionで最大3つのPDBが作成可能に!

これは、オラクル社の新しいマルチテナント構成をPUSHする動きの一環と考えられます。

非CDB構成をサポートする最後のリリース?

以前から、いわゆる従来型のデータベースである、非CDB構成("Non-CDB" / 非マルチテナント構成)のデータベースは「サポート終了を予定している」とのアナウンスがなされていましたが、とうとうOracle Database 20cでのサポート終了が明らかになりました。

Starting with Oracle Database 20c, installation of non-CDB Oracle Database architecture is no longer supported.

当然のことながら、Oracle Database 11g以前に作成されたすべてのデータベースは非マルチテナント構成ですから、 非マルチテナント構成のデータベースのサポート終了は実務的にかなりインパクトがあります

SE-RACが使用できない / Standard Edition RACの廃止

Oracle Database 19cからStandard Edition RACが廃止されました。 このため、現在SE-RACを使用しているか、SE-RACの高可用性を求めるユーザーは、以下のいずれかの選択肢を取る必要があります。

  • SE-RACに準ずる高可用性ソリューションを使用する: Oracle SEHA, 3rd Party Active-Standby HA構成, Dbvisitなど
  • Enterprise Editionに移行する: 大幅なコストUPにつながります。
  • 18cでSE-RACを使用する: 2021年6月でPremier Support終了してしまいます。

個人的にオススメなのは、SE-RACに準ずる高可用性ソリューションを使用する方法です。

最新OSへの対応

Oracle Database 19cを長期間安心して使用するには、Oracle Databaseを稼働させるOSも今後長期間サポートが予定されているOSを使用すべきです。

Oracle Database 19cは以下のOSに対応しています。

  • RHEL 8系Linux(Linux 8) : 19.7 RU以降で対応
  • Windows Server 2019

なお、最新OSに対応する一方で、古いOSはサポート対象外になっています。

19cで導入された主な新機能

19cで導入された主な新機能については、以下の発表資料でまとめています。(一部新機能ではない注目ポイントも含む)

「Oracle Database 19cの注目ポイント 15」発表資料公開 – JPOUG in 15 minutes #8

  1. Long Term Support Release
  2. SE-RACのサポート終了
  3. Oracle Fail Safeの非推奨
  4. RHEL6系Linuxの非サポート
  5. 自動索引付け / Automatic Indexing
  6. SQLの隔離 / SQL Quarantine
  7. リアルタイム統計 / Real-Time Statistics
  8. 高頻度自動オプティマイザ統計収集 / High-Frequency Automatic Optimizer Statistics Collection
  9. DMLリダイレクション / Active Data Guard DML Redirection
  10. ハイブリッドパーティション表 / Hybrid Partitioned Tables
  11. Oracle JETベースのEnterprise Manager Express
  12. ヒント使用状況レポート / Reporting on hint usage
  13. 実行計画の比較 / Plan comparison function
  14. 権限分析がEnterprise Editionで使用可能に / Privilege Analysis Now Available in Oracle Database Enterprise Edition
  15. EZCONNECTの指定可能パラメータが追加 / Easy Connect Plus

上記資料に記載していない新機能としては、以下があります。

19c新機能 SEHA / GIベース シングルHA構成 – SE2-RAC廃止対応

19cなどでのライセンス緩和

有償オプションまたは上位Editionでしか使用できなかったいくつかの機能が、ライセンス緩和により有償オプションなしで、または全Editionで使用可能になっています。

19cの導入手順 (2021/6/19追記)

VM作成からのOracle 19cインストール手順 前編(Linuxシングル)
VM作成からのOracle 19cインストール手順 後編(Linuxシングル)

19cへのアップグレード/移行

DBUAを用いた直接アップグレードに対応するリリース

19cのDBUAを使用すると、データベースを直接アップグレードできます。 ただし、対応するリリースは限定されています。

19cへの直接アップグレード対応するリリースは以下の通りです。

  • 18c
  • 12.2.0.1
  • 12.1.0.2
  • 11.2.0.4

上記リリースよりも古いリリースの場合、そのリリースから、まず11.2などのリリースに一旦アップグレードしてから、さらに19cにアップグレードにする手順を踏む必要があります。

ロジカルレプリケーションを用いたダウンタイムを短縮したアップグレード

DBUAを用いたアップグレードでは、アップグレード処理中はデータベースにはアクセスできません。 ロジカルレプリケーション製品を使用すると、アップグレード処理に伴うダウンタイムを短縮できます。

弊社では、以下の点からOracle DatabaseのアップグレードにはSharePlex for Oracleをオススメしています。

  • Oracle GoldenGateなどの他のロジカルレプリケーション製品よりも低コスト
  • Oracle SE2向けの低価格ライセンスが存在
  • レプリケーション性能に優れる
  • カスタマイズ性に優れる
  • コミット前伝搬、レプリケーション元とレプリケーション先のデータ比較などの便利な機能を持つ
  • Oracle GoldenGateではサポートされない古いOracle Databaseをサポートする

Oracle 19cへの移行/アップグレードにSharePlexをお勧めする理由

主な弊社取り扱い製品の19c対応

Dbvisit Standbyの19c対応

Dbvisit Standbyは、Oracle Database Standard Edtition 2向けの災害対策向けスタンバイDBを構築・運用するソフトウェアです。Oracle Data Guardに相当するソリューションです。

Dbvisit Standbyは、2020年7月時点の最新バージョン9および、1つ前のバージョン8でOracle Database 19cに対応しています。

SharePlex for Oracleの19c対応

SharePlex for Oracleは、Oracle Database → Oracle Database という構成のロジカルレプリケーション(論理レプリケーション)を実現する製品です。

SharePlex for Oracleは、2020年7月時点の最新バージョンSharePlex 9.4.0でOracle Database 19cに対応しています。

コーソルでは、以下の点を重視するお客様にSharePlexをお勧めしています。

  • コスト面でOracle GoldenGateの導入が難しい
  • レプリケーション性能を重視する
  • レプリケーション処理のカスタマイズ性を重視する
  • SharePlexの機能(コミット前伝搬、レプリケーション元とレプリケーション先のデータ比較)に魅力を感じる

Qlik Replicate(Attunity Replicate)の19c対応

Qlik Replicate(旧名Attunity Replicate) は、多くのデータベース製品間でのロジカルレプリケーション(論理レプリケーション)を実現する製品です。 Qlik Replicateは、April 2020 (version 6.6) でOracle Database 19cに対応しています。

SIOS LifeKeeperの19c対応

SIOS LifeKeeperはいわゆるHA構成を実現するためのクラスタリングソフトウェアです。

LifeKeeper for Linuxは、v9.3.2以降でOracle Database 19cに対応しています。

LifeKeeper for Windowsは、v8.7.0 以降でOracle Database 19cに対応しています。

Toad for Oracleの19c対応

Toad for Oracle 13.2以降で対応しています。

MaxGauge for Oracleの19c対応

MaxGauge for Oracle V5.3.J5以降で対応しています。

プロフィール

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渡部 亮太

・Oracle ACE
・AWS Certified Solutions Architect - Associate
・ORACLE MASTER Platinum Oracle Database 11g, 12c 他多数

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